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評価:
ジョナサン・サフラン フォア
ソニーマガジンズ
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(2004-12)
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あらすじ
アメリカから一人の青年がウクライナへとやってきた。彼の目的は祖父を助けたアウグスチーネという女性を探すこと。ガイドにアレックスという青年と彼の祖父がつき、行動を共にする。並んで語られる時の違う3つのストーリーが絡み合う。18世紀から第二次世界大戦をはさみ、さらには現代までも時間の軸を移動しながら構成される。
【以下、2005年3月31日の感想】
とある雑誌の書評で絶賛されていて、気になって買ったみた。アメリカでは100万部を突破したベストセラー小説らしく、まだ27歳と若いアメリカの作家が24歳のときに発表したデビュー作。
とにかく面白かったし、構成がすごい。アメリカ文学に新たな息吹が・・・みたいなオーバーな表現も言いすぎとは言えないんじゃないだろうか。
正直、最初の3分の1か4分の1くらいはとにかく読みにくかった。
アレックスという登場人物(僕には彼が主人公のように映った)がいるんだけど、その彼は言葉が変で、それで読みにくいっていうのがある。
最初はそれが翻訳家の能力の問題だと思ってて、とにかく読みにくい翻訳をする人だなと思っていた。実際単純な翻訳はあまりうまくない人なのかもしれない。でも、英文がどうなっているのか知らないけど、後半はとても緊迫感のある文章になっている。原文がどんなものか、とても気になる。ここまで原文が読みたくなったのは初めてだ。
とはいえ、中盤以降はとにかくストーリー自体が面白くなってくるから、言葉の読みにくさはだんだんと気にならなくなってくるんだけどね。
内容については、展開がおもしろい。著者と名をつけられたユダヤ人の主人公ジョナサンが書き上げる、彼の家系の過去をさかのぼるストーリーがある。
それと現在のジョナサンが自分の過去を探す旅がある。
そしてその旅で彼をガイドするアレックスが、ジョナサンに送る手紙がある。
この3部構成。
ちなみにジョナサンが自分の過去を探す旅は、ガイドとしてともに行動するアレックスによる書記である。とても複雑な成り立ちで、かなりわからないところが多いんだけど、その3つのストーリーの絡み合いが面白いのも事実だ。
ジョナサンの過去を探す旅と、ジョナサンに宛てた手紙はアレックスによるもので、この2編に関しては笑いが含まれる。特に旅の中でアレックスとジョナサンが交わすかみ合っていない会話はおもしろい。
アレックスは「ライ麦畑でつかまえて」(サリンジャー著)の主人公・ホールデンように似てる。アレックスの話し口調によるものなのかもしれない。
どこか大人をさめた目でみて、兄弟には異常に優しい。言葉がおかしく、自分に自信をもっている。とてもホールデンに似ていると感じた。
この彼のユニークさが、全体を通してのストーリーの感動を生み出しているんだと思う。
今言った2編とは一線を画す、ジョナサンの家系のストーリーは、どこかファンタジーのような要素を感じる。時代が古く、小さな山間の村での出来事のせいだろうか。このストーリーでは、とりわけ「愛」がテーマになっている。
とても気に入った素晴らしいフレーズがあるから、ちょっとだけ紹介しよう。
ここには素敵な愛のメッセージが山ほど詰まっている。紹介しようかとも思ったけど、これから読む人には楽しみが減っちゃうからやめておこう。
この小説は相当奥が深い。とても難しい。わからないことばかりだ。でもおもしろさはいくらでも伝わってくる。これからまた何度でも読みたいと思える小説だった。映画化が決まっているらしく、興味があるな。
村上春樹が翻訳してくれないかな〜、って個人的には思う。近々この作家の第2作が発売されるらしい。買うしかないです。
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